戦慄の世界へ

俺は敵を追っていた。
上からの命令、それだけだ。
戦闘機型……変形後の推進力に勝てるメダロットはほとんどいない。
しかし、俺も変形できる。
そして同じ程度のスピードなら楽に出せる。
変形後のスピードがコーガイザーの売りの一つだ。
(まぁ、コーガイザーは変形せずとも素早いらしいのだが)

俺の追う敵はメダロット研究所へ向かってる。
小さい研究所だが……壊されたりすると厄介なものがある……

【超空間転移装置】

……亜空間に転移するのではなく超空間に転移、時間を移動することができる装置だ。
タイムマシンならとうの昔からある。
しかしタイムマシンはエネルギーの消耗が激しい。
そのエネルギーをオートマチックジェネレーターとメダフォースだけでどうにか
しようって話だが……詳しくは知らん……
上の愚鈍どもからそれだけしか聞いてないのだ。

※亜空間は時間すらもない世界、運がよければ抜けられる。
 超空間は時空のこと、これを伝って時間を移動することができる。
 バリアのようなものが必要だけど。



本題に戻ろう。
敵が研究所に行くと戦いづらいので俺は空中戦を挑むことにした。
牽制がてらドライブCの機関銃を撃つ。
敵はふらつき、スピードが落ちた。
すかさず俺はナパーム弾でとどめを狙う。
しかし敵は凡愚ではなかった。
すぐさま変形を解除し、弾を切り払う。
敵はもう一度変形し、機関銃を撃ちながら急接近。
……まずい。
俺も同じ行動に出た。
言ってみれば捨て身だ。
しかし俺は違った。
俺と敵は真っ正面から衝突。
そして墜落。
俺も敵もなんとか着地。
俺は言った。
「もうやめろ、今のハンマーでお前は動けない。」
事実、俺はドライブA:ハンマーを使った。
KWGのハンマーに加速をプラスしたら痛いだろう。
それと同じだ。
しかし相手は機能停止してはいない。
念のために頭部のレーザーを充填する。
……逃げた。
後を追うしかない……



こういうときに射撃パーツは便利なのだがノーマルモードではレーザーしかない。
かと言って町中で変形するのは賢明ではない。まじめな話、壁にぶつかる。
敵も変形してないのが幸いだ。
俺は亜空間を移動して距離を詰めた。
相手の武器は両腕の対空格闘。
俺は飛行タイプ。
攻撃力なら相手に分がある。
(攻撃が来る前に炎を撃ち込む!)
「はあぁっ!!」
ボゥッ!
爪の間から火炎放射、こういう使い方もある。
意外な使い方だったせいか敵は驚いた。
「たああぁぁぁぁ!!」
左腕の爪を使い連続で斬りつける。
しかしガードの上だ。
腕が疲れてきた。
「はっ!」
敵が両腕を振り下ろす。
やばい、よけられない。
俺は右腕パーツで防御した、が。
アンチエアが簡単に守れるはずがない。
右腕パーツの機能が停止したようだ。
「…あっ!」
夢中で戦っていて分からなかった……
俺たちは研究所の前にいた。
さっきのメッタ斬りで知らず知らずの内に移動していたのだろう。
「ふふふ……」
敵は研究所へ入っていった。
「逃げるなぁ!下郎ぉ!」
レーザーを放ったが扉が壊れただけだった。



内部へ進む。
内部へ進む。
内部へ進む。
「クソが……!」
追っても追っても距離は縮まらない。
こんな室内でレーザーを撃つのは危険だ。
大事な機材を壊すわけにもいかない。

亜空間への転移はエネルギーの消費が激しい。
それに俺はオリジナルと違ってこの装置をうまく使いこなせない。
ましては今の俺にマスターはいない。
ふと、今はこの世界にいないマスターの顔を浮かべる
圧倒的に不利だ……
しかしマスターなら諦めないということを思い出し、俺は必死で敵に近づいた。

「あくぅかぁん……てんいぃぃ!!」
こんなゲスに負けられるかという思いだけが速度を上げた。
右がなければ左がある。
距離を詰めて左で滅多突く。
いつの間にか機能停止した右腕でも突いていた。
ここで俺が頑張らなければ今の世界にいない優護に申し訳が立たない。
疲れたが、敵の両腕を破った。
もう一撃……
「はああぁぁぁぁっ!!」
頭部のレーザーを放つ。
「かはぁっ」
見事命中。
俺はトドメに入った。
左腕を振り下ろす。
しかし……
「…………」
……動かない。
体が全く動かない。
あいつの手の先から感じる何かによって。
「愚…鈍……が……」
「ほう、私を愚鈍というかね。」
「愚鈍……だから……ぐど…んと……」
「さらばだ、使い魔サンカンツ君。」
ここで、俺の記憶は終わった。



気がつくと敵が消えていた。
ふらついた足で超空間転移装置のある部屋へ行く。
(飛ぶ気も起こらない……)
そこに超空間転移装置というものはなかった。
メダルが落ちている。
先ほどまで戦っていた敵のパーツがあった。
そのパーツにこのメダルを入れてみる。

「あれ?」
「おい…お前はさっきまで俺と戦っていたヤツか?」
「違うよ。」
「じゃあ、お前は?」
「超空間転移装置に入っていたメダロットだよ。」
「……!? 超空間転移装置はメダロットのパーツなのか!?」
「うん。」

パーツのあったところにいく。
行き先が表示されてある。

────2056年────

仲間がきて、俺はすぐに自分のいる世界(居場所)に戻された。
装甲が回復した後、自分のもっているタイムマシンをみる。
戻れる時間は2056年。
追える。 俺はあいつを倒す。

こうして俺の物語は終わりへ向かう。

俺が────
────俺に会うために。

俺は最期まで奏でよう、戦慄の旋律を。




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